夕方、散歩にでも行こうと思ったら、みるみるまにねずみ色の雨雲がたちこめ、雷がとどろいた。電線をばちばちいいながら光が走り、大粒の雨が打ちつけるように降りだす。
雷といえばカブちゃん。
生きていたころは、雷の音らしきものがかすかに聞こえてきただけでも、あわてふためき、こわがっていたものだ。
先週の水曜日に永眠してから5日が経った。翌日、近くのショッピングモールに入っているペットショップに行って、ゴールデンの子犬を見たときは思わず涙が流れた。
間の悪いことに、スタッフのお姉さんが「なにか飼っていらっしゃるんですか?」ときいてくる。なにも答えられない私のかわりに夫が「ええ、まあ」と返すと「なにを飼ってらっしゃるんですか」とまたお姉さん。「ゴールデンを」と夫。「死んでしまったのですが……」。お姉さんは慣れているのか「そうですか。抱いてみたいワンちゃんがいたら、おっしゃってくださいね」といってくれる。
ゴールデンもいたけれど、カブのほうが二倍も目が大きくて口が短くて、ぜんぜんかわいい。愛らしいトイプードルもいたし、チベッタンなんとかいうグレムリンみたいな愛嬌のある子犬もいたけれど、カブちゃんほど美形でキュートな犬はいない。カブ以外に抱きたい犬はいないよ。
嗚呼。
こんなことならカブの子どもを作っておけばよかったかな。マジでカブを譲り受けたブリーダーの連絡先を探して電話しようかと思ったくらい。でも、父は新しい犬を飼っても、もう最期まで面倒を見られる自信がないといっているし、私たちもあちこち移動する生活をしているので責任を持って飼うことは難しい。やっぱり犬はもうカブちゃんが最後かな。
昨日、野鳥公園を散歩していたら、50代くらいのおじさんが、カブにそっくりなゴールデンを連れていた。目がくりくり大きくて、鼻が短いタイプのゴールデン。アウトドア用の小さな椅子に腰掛けたおじさんが上に放ったボールを上手に口でキャッチしている。
カブと私もよく「キャッチ」をして遊んだものだ。若いころのカブはそれこそ百発百中でボールをキャッチした。どんなに高く放り投げても。たまにはずしてしまうと、すごく悔しそうに吠えて、「もう一回。敗者復活!」といわんばかりにボールをねだっていたものだった。
それが、この数年、キャッチすることのほうが珍しくなり、最後の数ヶ月は、私が彼の鼻先でボールをはなし、それすらも落としてしまうほどだった。きっとカブは悔しい思いをしていたんだろうな。落ちたボールを見て、とてもさびしい目をしていたっけ。
夕方、5時半を知らせる音楽が流れると、ついつい思ってしまう。
「そろそろカブの散歩に行かなくちゃ」
そのうち、そんなことも思わなくなってしまうのだろうか。カブがいないことに慣れてしまうのだろうか。だとしたら、こんなに寂しいことはない。
2006年07月03日
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